人は、自分の財産を使って自分の人生をつくっていく。
財産があれば、旅行に行くこともできる。
趣味を楽しむこともできる。
好きなものを買うこともできる。
そうした一つ一つの選択が、その人らしい人生を形づくっていく。
財産を守る「節税」もその手段の一つであろう。
ところが、「税金をいかに減らすか」ということだけを追い求めるとおかしくなっていく。
本来なら自分の人生のために使うはずだったお金まで、
「このお金を使えば、相続財産が減ってしまう」
「それなら、子どもに贈与したほうが節税になる」
と考えるようになってしまう。
本当は行きたかった旅行を我慢する。
本当は欲しかったものを買わない。
将来の相続税を減らすために残しておく。
気がついたときには税金は少なくなったけれど・・・
そんなことが実際に起こり得る。
以前、ある資産家の奥様が、ご主人の相続の際に私にこうおっしゃった。
「主人はまったく贅沢をしてこなかった。今さらこんなにお金があっても、どう使えばいいのかわかりません」
奥様は、その翌年に亡くなられた。
あの言葉にどんな思いが込められていたのか。
「まったく贅沢をしてこなかった」という言葉の裏には、「贅沢をさせてもらえなかった」
という思いもあったのではないか。
払わなくてもいい税金まで払う必要はないし、適切な相続税対策を考えることは大切。
しかし、節税はあくまで「手段」であって「人生の目的」ではない。
たとえば、相続税を100万円減らすことができたとしても、そのために楽しみを我慢していたのなら、
本当にそれでよかったのだろうか。
その100万円を使って、最後にもう一度行きたかった場所へ旅行する。
大切な人と食事をする。好きだったものを買う。
そうしたことのほうが、その人の人生にとってはるかに大きな意味を持つことだってある。
「節税しなければ損だ」
「税金を払う人はバカ」
そんな風潮が強い。
しかし、税金を減らすことだけを考えるのではなく、
「自分は、このお金を使ってどんな人生を送りたいのか」
相続税をいくら減らせたかではなく、自分の財産を使ってどれだけ自分らしい人生を生きられたか。
少し立ち止まって考えても良いかもしれません。

